接客と接遇は、両者とも「お客様をもてなすこと」という意味を持ちますが、実はこの2つの言葉には大きな違いがあります。
では具体的にどういう違いがあるのでしょうか?
2つの言葉の意味を確認しながら、飲食店における接遇のポイントについて、詳しく解説します。
目次
接客と接遇の違いとは
最近メディアなどでもよく見かけるようになった「接遇」という言葉。
接客と接遇は具体的にどう違うのでしょうか?まずは接客と接遇の違いを確認しましょう。
接客とは
接客とは、お客様の要望に応えるために、お店が決めたマニュアルに沿ってサービスを提供すること。単純にお客様をもてなすだけでなく、接客の態度や細かい所作ひとつで
「料理に付加価値をつける」といった大きな役割も担っています。
接客のやり方によってお店の雰囲気や料理・印象は変わるので、接客とは「お店の顔」のようなものですね。
接遇とは
接遇の「遇」の文字は「おもてなしの心」を意味します。
接遇とは接客に加え、「お客様のことを大切に思っています」「楽しくて素晴らしいひと時を過ごしていただけますように」といった
相手を心から想う態度や行動、言葉に乗せて、接客以上に愛のこもったおもてなしをすることです。
たとえば雨の日にご来店いただいたお客様へ、雨で濡れたお召し物を拭くためのタオルを差し出しながら
「雨でお足元が悪い中、お越しいただき、ありがとうございます」と、ひとこと添える「心遣い」こそが「接遇」です。
こんなときに接遇を感じる!

接遇を通して「またこのお店に来たい」「誰かにオススメしたい」とお客様に思ってもらうことが、おもてなしの目的のひとつ。
ではお客様はどういう時に「接遇」を感じてくれるのでしょうか?
飲食店の経営指針「QSCA」にもとづいて、細かくご紹介します。
品質(Quality)
仕入れる食材は、フレッシュで高品質なものを選び、品質や鮮度を保つために適切な保管方法で管理しましょう。
味にムラつきがなく安定したクオリティーの料理を提供することで、「このお店はいつも美味しい」「店選びで絶対に失敗しないお店」という厚い信頼も感じてもらえますよね。
接客態度(Service)
立ち振る舞いは機敏に美しく、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。安定した温かみのあるサービスを提供することで、お客様はリラックスして過ごせます。
お店の雰囲気に合った接客や場面に応じたサービスを提供することで、お客様にとって「特別なお店」に変わります。
清潔感(Cleanliness)
清潔感はお店の印象を大きく左右するもの。テーブルや椅子、お手洗いやメニューなど、細かい部分にまで気を配り、どんなに忙しい時でも清潔さを保ちましょう。
スタッフの身だしなみを整えることで、衛生管理面でのお客様からの信頼をさらに深め、安心感・信頼・心地よさを感じてもらえます。
付加価値(Value)
お客様が揚げ物を注文した時、提供する際に「揚げたてをご用意しましたので、お気をつけて召し上がりください」とひとこと添えるだけで、安全かつ美味しく食べてもらいたいという「まごころ」が伝わるでしょう。
「自分のために揚げたてを用意してくれた」「やけどしないようにと心配してくれた」という愛情が加わることで、その一品は特別なものになり、より料理の味が引き立てられます。
ちょっとした心遣いを添えることで、お店の印象が良くなり「また行きたい!」と再来店につながります。
雰囲気(Atmosphere)
お店の雰囲気は、お客様の「居心地の良さ」と直結しています。スタッフ同士の業務的な会話は、どんなに忙しい時でも言葉遣いや声のトーンは、柔らかくすることを意識しましょう。
自分でも気が付かないところで意外とお客様から見られていますよ。
お店の雰囲気は、スタッフが発するオーラで作られているので、お客様に安心・リラックスして過ごしてもらえる環境づくりに取り組むことも、接遇のポイントです。
接遇を感じてもらうためにできること
接遇と接客を詳しく掘り下げたところで、スキルアップのために何から始めればいいのでしょうか?
今すぐできる3つのポイントをご紹介します。
マニュアル通りの対応が完璧にできる
接遇のおもてなしを接客に上乗せするには、接客の土台である「マニュアル=基礎」を完璧にすることがとても重要です。
注文の取り間違いをしてしまった時、素早く正しい商品を提供できないと、心込めたおもてなしをしていても「注文間違えているし、料理もくるのが遅い……」と、心に響かないでしょう。
まずはマニュアル通りの対応を、完璧にすることが大切です。
お客様一人ひとりに合わせた接客をする
お子様連れのお客様がいらっしゃった時、お子様と一緒に座りやすいお座敷やボックス席へご案内できるといいですね。
お子様用の椅子やスプーン・フォーク、小さいコップなどを用意することも、お子様連れのお客様にとっては接遇を感じるポイントではないでしょうか。
お客様の人数や状況など、それぞれに合わせた対応をすることも、接遇レベルのおもてなしです。
接遇マナーの研修で実践しながら理論を学ぶ
書店で接遇に関する本を購入して勉強することも大切ですが、研修に参加して実践的に身につけていく方が、成長への近道だといえるのではないでしょうか。
マナー研修では、業種や年齢など自分に合った研修内容を選んで受講できるので、場にふさわしい対応や知識を詳しく学べます。
接客のプロから学ぶ
研修では普段の自分の振る舞いを接遇のプロである講師に見極めてもらい、アドバイスがもらえるのでより成長できるのではないでしょうか。
研修で一度経験しているので、現場に戻った瞬間に実践できるところも研修の魅力のひとつですよね。
まとめ:日本独自のおもてなしの心で接する!

飲食店に勤務していると必ず耳にする接遇。
よりよいお店にするために、おもてなしの心を持って接客をおこないましょう。
- 接遇とは「おもてなしの心」「お客様への無条件の愛」そのもの
- 素晴らしい接遇を提供していれば、リピーターにつながる
- 接遇を身につけることで、接客スキルの向上と自分の心が成長する
この点に注意しながら勤務すれば、お客様にも接遇を感じてもらえるようになるはず。
お客様に満足していただけるように、おもてなしの心を忘れずに取り組んでいきましょう。