「労働時間が長い」と言われがちな飲食店。できれば無駄に長い時間働きたくないですよね。
ではなぜ長時間、仕事をしなければならない状況が発生しているのでしょうか。
また労働時間分の給料はしっかりと受け取っているのでしょうか。
今回は、労働時間に関する基本的な法律を学びながら、飲食店の労働時間が長い理由、また長時間労働を減らす方法・対策を解説します。
目次
飲食店の労働時間は長い?
労働時間が長いといわれている飲食業ですが、なぜ長いといわれてしまうのでしょうか。
原因を考えてみましょう。
拘束時間が長い
11時オープン23時閉店の飲食店で14時から23時までのシフトだった場合、休憩を除いた実際の労働時間は8時間ですよね。
しかし実際には、シフト前に事務作業がある場合は少し早く出社したり、
営業時間が終わった後の清掃やレジ締めなどの閉店作業が24時までかかると10時間を超える場合も。あっという間に長時間労働になってしまいますよね。
雑務が多い
飲食店では調理や接客といった仕事だけでなく、仕込みや仕入れの発注作業、シフトの調整などの雑務が多いです。正社員の場合は、本社で会議があったり各店舗のミーティングをおこなったりしなければいけません。
シフトで定められている勤務時間の間におこなうことが多いので、本来定められた労働時間では業務が終わらず、長時間労働につながってしまいます。
労働基準法で定められている労働時間とは
労働時間は法律で定められています。労働時間が長ければ、その分の給料を貰うべきですよね?
こちらでは労働基準法で定められている労働時間と残業代について解説します。
1日8時間・週40時間
労働基準法では、雇用者は労働者に対して休憩時間を除いて「1日8時間・週に40時間以上」働かせてはいけないという決まりがあります。
たとえば1日10時間勤務を週に4回の場合、週計算では40時間以内ですが、
1日8時間を超えているので規則違反です。
反対に1日8時間のシフトで週に6日勤務した場合、1日の時間は守られていますが
1週間の労働時間が48時間になってしまうので規則違反。
つまり労働基準法では、1日8時間と週に40時間の両方を守らなければいけません。
残業手当は時給×25%
残業手当は「時給×25%」。
労働時間内に仕事が終わらず残業した場合も、その時間分の残業手当がつきます。
たとえば時給1,000円の人が1時間残業するとその間の時給は1,250円です。
深夜手当は時給×25%
22:00から5:00までは深夜労働時間といい、基本的な労働時間とは違います。
この時間帯に働く場合は、時給に25%以上上乗せした金額を加算しなければいけません。
休日出勤手当は時給×35%
休日に出勤した場合「時給×35%」の割増が労働基準法で決まっていますが、休日出勤手当は法定休日に仕事をおこなった場合のみ発生します。
労働基準法で定められた休日は、週に1回以上なので同じ週に1日分の休日があれば適用されません。
管理職の人は要注意!
残業手当と休日出勤手当が支払われない?
管理職になると、残業手当と休日出勤手当が適用除外される場合があります。
しかしこの除外対象は、経営者相応の対応を受けている役職者に限るため「役職をつけて手当てを削減しよう」といった経営側の策略は違法です。
深夜手当は管理職でも受けられる
22:00から5:00までの深夜手当は管理職でも「時給×25%」を受け取れます。
ただし雇用契約や就業規則において「基本給に○時間分の深夜手当を含める」といった記載がある場合は、深夜手当は加算されないので注意してください。
アルバイトの労働時間

超過勤務手当は時給×25%
アルバイトが残業をおこなった場合は、超過勤務手当が発生します。
ただし法定労働時間の手当は
1日8時間・週に40時間を超過した場合のみあてはまります。
法定労働時間以内で、雇用先が独自に定めた労働時間を所定労働時間と呼びますが、この所定労働時間をオーバーしただけでは残業手当がつくことはありません。
例
たとえばAさんが4時間の所定労働勤務の契約をして、4時間の勤務後に2時間残業をしたら労働時間は6時間ですが、残業の2時間に残業手当は発生しません。
残業手当はあくまで、1日8時間以上・週40時間以上働いた時にのみ発生します。
深夜手当は時給×25%
深夜手当は原則22:00以降、5:00まで発生します。
時給1,000円でシフトが20:00から3:00の場合、
20:00~22:00までは1,000円、
22:00~3:00までは1,250円という計算です。
休憩時間
労働基準法では、休憩時間も一定の時間に対する最低時間が決められています。
基本的に
6時間以上8時間未満の場合は45分間、
8時間以上の場合は1時間
の休憩を取らなければいけません。もちろんこれは最低数値なので、これ以上の休憩時間を設けることも可能です。
長時間労働をなくすためにできること。
飲食店の労働時間が長くなってしまう理由と残業や深夜労働の手当について説明しましたが、具体的にどうすれば長時間労働をなくせるのでしょうか。
よく読んで、労働時間の削減をしていきましょう。
社員の人数を増やす
社員を増やすことが長時間労働を減らすもっとも有効な方法です。出勤日や出勤時間が契約で定められているので、長時間一定の人員を確保できます。
しかし月給制の正社員はパート・アルバイトよりも人件費が高いので、経費とのバランスに気をつけましょう。
アルバイトの人数を増やす
アルバイト・パートの人数を増やすのも、一人あたりの長時間労働を軽減する方法です。
たとえ短時間勤務のパートやアルバイトでも人数が多ければ、人員が少ない時間帯をカバーしやすいでしょう。
一方でパート・アルバイトは個人の都合で休みを入れたり、時間を削ったりすることも多いので、シフト管理が難しくなってしまう可能性が高いです。
最適な人員数をシフトにいれておく
シフトを作成する段階で、働いている社員やアルバイトの能力・作業工数などをまとめ、時間帯の売上を加味したうえで最適なシフトを組むことも労働時間を長引かせないポイントです。
ピーク時間には経験豊富なベテラン従業員や正社員を配置し、作業が円滑に進み残業・超過労働が発生しないようにするなどの工夫をしてみましょう。
アルバイトがシフトに入りたくなるような対策をする
土日の時給をUPする
人が足りなくなりがちな土日には時給を少しアップするなどの対策をおこなうと、シフトが埋まりやすくなり、人員を確保しやすくなります。
人件費を計算し、アルバイトがシフトに入りたくなる提案をしてみましょう。
週末・祭日のみ「まかない」や「社割」「手当」を提供する
賃金だけではなく、まかないや社割といった特別で直接的な「嬉しいこと」を提供することも、アルバイトを忙しい時間帯・曜日に集められるのではないでしょうか。
もし自分がパート・アルバイトの立場だったら何をすればもっとシフトに入りたい!と思ってもらえるのかを考えてみましょう。
まとめ

長時間労働やサービス残業は現代社会の問題として取り上げられることも多くなり、沢山の会社や企業が改善に乗り出しています。
今回の記事について3つのポイントにまとめておさらいしてみましょう。
- 「1日8時間・週に40時間」以上の勤務は残業手当・休日手当などが支給される
- 飲食店では雑務が多く、メインの仕事が忙しいと就業時間に終わらない場合も多い
- 長時間労働を減らすためには、必要な時間帯に必要な人員を確保することが大切
仕事にやりがいを持って取りかかるのは素晴らしいことですが、身体や心を休める休息・休暇の時間をなくしてはいけません。労働時間が長い場合は状況を見直し、改善できる方法を探してみましょう。