飲食店に長く働いていれば、接客態度や料理の提供について苦情を申し立てるクレーマーという存在には必ず直面します。
しかし、クレーマーというのは「ただいちゃもんをつけたい」というだけの場合と、本当にお店に過失があってそれを訴えている場合の2通りが考えられます。
クレーマーとはいったいどのようなものなのか、その内容に対してどういった対処法を確認し、いざという時に冷静に対処できるようにしましょう。
”明らかに”理不尽なクレーム
ケース1「女性の店員に対して過剰なサービスを要求する」
飲食店で起こるクレームに「サービスが悪い」という内容のものがあります。もちろん、本当に態度が悪く失礼な言動をしてしまっていた場合もあるでしょう。
しかし、理不尽なケースでは実際にはマニュアル通りの正しい接客を行っていたのにもかかわらずクレームを言われることがあります。
中でも女性に対して過剰な会話を求める、
セクハラを行うといったクレーマーは女性従業員がその行動を受け入れないと「ここの店員はしつけがなっていない」と憤慨するというケースがあります。
ケース2「嘘の苦情を申し立てて店員を非難する」
「店員に雑な態度を取られた」「お皿を置く時に乱暴だった」などのクレームがよくありますが、飲食店で働いていると起こるクレームの内容は様々で、お客様に不快な思いをさせないように、店員の教育はしっかりと行わなければなりません。
しかし、中には自分の特に理由もなくストレス解消のためや謝礼品目当てに、起こってもいないこと・起こり得ないことを真実のように語る「クレーム詐欺」というのも存在します。
睨んでいないのに睨まれた、丁寧に接したのに言葉遣いが悪い、などクレームをつける人の琴線はどのタイミングで触れるのか分かりません。
そのクレームが本当に正しい苦情なのか、適当なクレーマーなのかを見極めることが大切です。
ケース3「明らかに本人のミスにもかかわらず店側に責任を求める」
例えば、提供した時にはしっかりと調理されていた料理なのにも関わらず長時間放置して本を読んでいて、冷めてしまった。こういった時に「料理が冷めていて不味い」といったクレームをつけられたら、これは間違いなく理不尽なクレームです。
提供した時から冷めていたのなら店側の責任ですが、料理をすぐに食べなかったのはお客様です。
オーダーを取った時間、提供時間なども確認しておくことが大切なこと。提供時間から1時間立っていた場合などは、商品が冷めるのは当然です。
にもかかわらず、「料理が冷たい、作り直せ」「料金は支払わない」といった悪質な苦情を申し立てられた場合には毅然とした態度で対応しましょう。
あまりに悪質な場合は警察や警備会社への通報を
こういった理不尽なクレームは、他のお客様のためにも安易に受け入れず拒否しなければなりません。しかし、お店でいつまでも居座って罵倒を浴びせたり、金銭的な誠意を求められてしまったというような事件に繋がりそうな場合は、
すぐに警察や警備員を呼んで対応してもらいましょう。
よくあるクレーム内容
続いては、飲食店で比較的よく聞かれるクレーム内容を3つご紹介します。
どれも、お店側に過失がある場合と不可抗力で起こってしまう場合があるクレームです。どんな状態でこういったクレームが発生するのかを確認しておきましょう。
1.「頼んでいた料理に虫が入っていた」
まずは、頼んだ食事の中に虫や髪の毛など異物が混入していたというクレームです。もちろん、調理や配膳の段階で異物が混入していたとしたら、それは非常に問題で衛生管理を徹底しなければなりません。
しかし、時にはお客様が食事をしている最中に小さな虫が入り込んでしまったり、お客様自身の髪の毛が落ちてしまったという場合もあります。
2.「料理がいつまで待っても出てこない」
頼んだ料理がどんなに待っても出てこない、というのも多いクレームの一つです。キッチンが混雑していたり連携がうまく取れていないと、本来料理を出すべきペースでお客様に提供できず、結果長い間お待たせしてしまうことがあります。
「待たされたと感じる時間」というのは、個人差があるので例え自分たちがまだ大丈夫、と思っていてもお客様からすればとても長く待ったと思う場合もあるでしょう。
3.「注文したものと違う料理が出てきた」
今はPOSシステムと呼ばれる、手元の機械でメニューを登録すればレジにもキッチンにもそのデータが配信されるシステムが主流となり、押し間違えが無い限りオーダーミスが起こることは減ってきました。
しかし、機械の操作に慣れていなかったりお客様の言葉を聞き間違えたりした場合、「本来頼まれたものとは違うもの」を提供してしまうこともあるでしょう。あるいは、お客様が自分が何を頼んだのか勘違いしているケースもあります。
”正しい”対応方法

ご紹介した内容のよくあるクレームが起こってしまった場合、どういった対応をすればお客様に気持ち良く食事をしていただけるかを考えていきましょう。
1.「頼んでいた料理に虫が入っていた」
まず、異物が入っていた料理を食べてしまったという不快感に対してお詫びを申し上げましょう。
そして責任者に相談し、その料理を作り直すか、料理分の料金を頂かないことにするか、どちらかの提案をします。
中には、取り除けば食べられるから、と寛大な対応をしてくれる場合もあります。その時にはデザートや小さな小皿を1つサービスすると店の印象がよくなってその後のご利用も期待できるのでおすすめですよ。
2.「料理がいつまで待っても出てこない」
まず、お待たせしてしまっていることに対してのお詫びは必須です。
そして、キッチンにどのくらいで出来上がるか確認し、「後○○分ほどでご提供できます」と
残りの待ち時間を具体的に伝えましょう。この時も食事を待たせている間に、箸休めになるようなメニューをサービスするとお客様の気持ちも落ち着きやすくなります。
3.「注文したものと違う料理が出てきた」
提供したメニューが違うものだ、と指摘されたらまず注文を受けた際の履歴を確認してください。正しく打ち込めていたとしても、聞き間違いということがあります。
お客様に「これで合っています」などとは言わず、本当はどのメニューを希望していたのかを再確認し、お詫びとすぐに作り直す旨を伝えましょう。
事前に予防する方法とは
1.「頼んでいた料理に虫が入っていた」
異物混入を防ぐには、何よりもキッチンや店内の衛生管理を徹底することが重要です。
キッチンには、虫やごみが付きやすい段ボールを置かない、生ゴミや食品クズはすぐにゴミ箱に捨てるといったルールを作り、全員が共有できるようにしてください。
また、従業員はキッチンスタッフもホールスタッフも長髪をまとめ、アクセサリーを付けないなど異物を落としてしまう可能性を減らす努力を行いましょう。
2.「料理がいつまで待っても出てこない」
料理が遅い、というクレームを予防するには、まず店内の連携をしっかりと作ることです。注文したはずなのにキッチンに伝わっていないなどということが無いようにしましょう。
その上で、調理時間が長くなりそうなメニューを注文された時には「お時間が○○分少々かかりますが、よろしいでしょうか」などと事前に一言添えておくとお客様も余裕を持って料理を待てるようになります。
時間がかかる料理のみを注文された時には「こちらのメニューならすぐにお出しできますが、ご一緒にいかがでしょうか」とおつまみや単品メニューなどもすすめてみてください。
何も食べずに待っているより、何かつまみながら待っている方が待ち時間は短く感じるはずです。
3.「注文したものと違う料理が出てきた」
まず、注文を受ける際に使う機械の扱いを完璧に覚えましょう。どこを押してどう登録するかを予習しておくとお客様の前でも緊張せずに操作できるようになります。
そしてお客様が言った注文はすべて間違いないように打ち込み、注文の終わりにはメニューを復唱しお客様と店の間に情報のすれ違いが起きないよう徹底しましょう。
まとめ
飲食店に勤めていれば理不尽なものから店に問題があるものまで、クレームから逃れることはできません。
しかし、クレームが起こった時には「どうしよう」と慌てるのではなく、そのクレームの内容を見極め、お客様に納得していただける対応を取ることがその後の店の印象を良くするプロセスなのです。
クレームへの対応、予防を完璧にして、苦情を言ったお客様ですらまた来たい、と思えるような店づくりを目指しましょう。