飲食店で働き始めると頻繁に耳にする「原価計算」という言葉。
働き始めて間もない頃は、原価率が一体何を指すのか、どんな数字の割合なのかわからない……という方も多いのではないでしょうか?
「知ってて当たり前のこと」と言われそうで、先輩社員に聞くのも恥ずかしいという新入社員の方に、原価計算や原価率についてわかりやすく解説していきます。
目次
原価計算って何をするためのもの?
原価計算とは、「ある商品を作るために、どのくらいのお金がかかったのか」知ること。
こんな風に聞くと、商品を作っている会社だけで使う言葉なの?と思うかもしれませんが、世の中で売買されている全ての物に「作るためのコスト」が存在するため、どんな商売でも原価計算は行われています。
もちろん、飲食店で作る料理やドリンクも例外ではありません。
原材料だけでなく、食材に対する材料費や人件費なども「作るためのコスト」に含まれます。
原価計算を行う目的とは?
原価計算を行う目的は、大きく5つにわけられます。一つずつ確認していきましょう。
財務諸表作成
会社がどのくらい儲かったのかがわかる「利益」を算出するのに必要な、財務諸表を作成するために行います。
原価を正しく算出することで
会社の利益を把握し、どのくらい儲けているのかを正しくまとめられます。
価格計算
商品を販売する時に、どのくらいの価格で売ったらいいかを確認する「価格計算」。
かかった費用よりも販売価格が安いと、利益どころか損失になってしまいますよね。一体いくらで売れば正しい利益がでるのかを、原価計算によって導き出しています。
予算管理
会社は年間でどんな商品を、どれくらいの量を売り、どのくらいの商品を制作するかなどの予定を組まなければ、
銀行や取引先とのやり取りが難しくなるケースもあります。
原価計算を用いて1年の予算を組み立てたるなど、事業計画をはっきりさせて経営管理を行います。
予算や売上予測に合わせて、ボーナスなども変動するので大切な項目ですね!
基本計画策定
今後の会社の動きや予算を予測し、方向性を決めるために基本計画を立てるためにも原価計算が欠かせません。どのくらいの予算を組めばどんな風に利益が増えるの?といったシミュレーションが大切です。
原価管理
商品を一つ作るためにも目標を作り、そのゴールを目指すのが会社の動きですよね。
原価計算することで、その目標指数が分かれば、そこに向かって努力し、失敗した時には原因究明の指針になります。
原価計算から導き出される「原価率」とは?
原価計算を行うと、その商品に対する「原価率」が算出されます。
売上に対して「かかった費用」の比率のことで、これが高ければ高いほど利益は低くなり、
反対に原価率が抑えられれば商品に対する利益が高くなるということです。
原価計算はこうする!売上管理でよくある計算方法

大きな企業では、POSシステムを導入することで、パソコンからすぐに原価計算の結果を参照できます。しかし、実際にどんな計算式でその結果がなりたっているかを知っておかなければ、数値を現実的にとらえることはできないでしょう。
飲食店の売上管理でよく使われる原価計算は以下のとおりなので、頭の片隅に入れて売上管理をしてみると、今までと違った見方で数字を確認できるようになりますよ!
基本の原価計算の方法とは
一番基本的なのは、商品に対する「原価率」を算出する原価計算の方法です。
原価率は「売り上げの原価÷売上高×100」で算出します。
売上高に対して、原価が何割あるのかを導き出し、それに100をかけてパーセンテージ表記にしただけなので、覚えやすいですよね。
一緒に覚えておきたいロス率の計算方法
原価率を算出する方法と一緒に覚えておきたいのが、「ロス率」です。
ロス率とは、廃棄や値引きなどで減った利益を計算した比率のこと。例え原価率が低くても、ロス率が高ければ利益はでません。
ロス率を算出するには、「販売数×廃棄・値引きの個数」でロス高を算出します。
その後、「ロス高÷売上高×100」の計算を行うと、ロス率を求められます。
あまりイメージつかない方のための原価計算の覚え方
原価計算の方法についてご説明しましたが、計算方法だけみてもわからないという人も多いのではないでしょうか。
実際に計算してみないと、中々頭の中に入ってこないものですよね。そこで一度、難しいことは置いておき、算数ドリルの感覚で原価計算について理解を深めてみましょう。
問題.果物屋さんでりんごが3つ売れた時の原価率は?
あるところに、果物を売っているお店がありました。そこでは、1つ40円で買ってきたリンゴを100円で売っています。
ある日、果物屋さんでりんごが「3つ」売れました。果物屋さんの売上の内、仕入れにかかった割合はどのくらいなのでしょうか?
回答1.
この問題では、まず原価がいくらか、売り上げがいくらかを計算しなければなりません。
果物屋さんは、100円でリンゴを売ったので「100×3個」であり、
果物屋さんの売上は300円です。
しかし、300円がそのまま儲かった金額ではありません。
果物屋さんは40円でリンゴを仕入れてきたので、「40円×3個=120円」分の原価から原価率を算出しなければなりません。
つまり、果物屋さんの仕入れにかかった割合は
「120円(原価)÷300円(売上)=0.4=40%」ということになります。
数字が細かくなったり、販売している商品の種類が増えたりすると複雑に感じますよね。
もしわからなくなった場合には、簡単な数と価格にあてはめると頭がすっきりして、計算式を理解できるようになります。Excelでも無料のテンプレートがあるので、気になる方は調べてみてください。
知っておきたい平均原価率
原価率の目標は、各企業によってさまざまです。しかし何事にも、平均は存在します。飲食店でも、業態内で「このくらいがちょうどいいのでは?」とされている、平均原価率が定められています。
平成17年に「飲食店.COM」が調査した内容では、原価率の平均は33.3%。一般的に飲食店で推奨されている平均原価率は30%~40%とされているので、どの店舗も大体このあたりの原価率で経営を行っていることがうかがえます。
まとめ

商売はやりがいや意欲がとても大切。
しかし根本的に、利益を出さなければ会社として成り立ちません。
- 「原価÷売上高×100%」で算出された割合を原価率と呼ぶ。
- 原価計算は会社の利益や今後の予算、目標など様々な場所で活用されている。
- 飲食店の平均原価率は30%~40%。これ以上高ければ低くするように材料やコストを見直す
これらのポイントを押さえて、自分の会社や店舗の原価率をもう一度見直してみましょう。原価率がどんな風に導き出されているのかを理解したうえで、それが適しているものなのかを考えれば、より効率的に利益を上げられる店舗・経営者へ成長できることでしょう。